紅魔のお茶会
それは偶然だったのだろうか。
時折、妹の関係で訪れるようになった紅い館。
奇妙な縁で知り合った、紅い吸血鬼。
彼女の館で、私は再び奇縁に出会うことになった。
あるいは、彼女の気紛れで結び付けられたのかもしれない。
それでも私にとって、この日の出会いは大事なものになりそうだった。
それは偶然だったのだろう。
私達が、演奏会を頼まれるのは常のこと。
飛び入りの観客が居ても、私達はそう気にしない。ましてや、今回は依頼主の客人だ。
ただ、その客人と親しく言葉を交わすというのは、滅多にないことであった。
こんなことが起こったのは、今回の依頼主の能力なのかもしれない。
ならば、この日のことにも、きっと何かの意味があるのだろう。
面白そうなことが起こりそうな日だった。
地底の主が訊ねて来たときに、それは確信に近いものになったけれど。
別に縁を繰ったわけではない。戯れに繰ることはあるが、本当に気が向いたときだけだ。
二人がどう思ったのかは知れない。私は心など読めないし、音の動きで感情を知ることもない。
だから本来は偶然のはずなのだ。この出会いも、この対話も。
けれどもはたして、今日というこの日は、本当に偶然だったのだと思う?
――――さあ、お茶会を始めましょう。